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奇跡の形







「あなたに投票するわ」

「ありがとう!」

そのやりとりをすぐ横で見ていたユナンの視線に、私は気付かなかった。






今年のエナの子コンテストの男子の部は、
去年同時に移住してきたユナン、ヴェルヌ君、レイオン君の三人が見事候補者に選ばれた。


「明日はエナの子コンテストだね」

「そうね、明日はユナンも出るのよね? あなたもヴェルヌ君もレイオン君もみんなカッコイイから明日は豪華ね♪
まぁ、あたしはいつも通りウミカイの卵を集めなきゃいけないんだけど・・・」

「ビーチェも大変だなぁ・・・。やっぱりあれだけ年の差があると子供が出来にくいのかもね」

「そうねぇ・・・。でも、頑張るしかないわよ!」

前日、仕事帰りにユナンとばったり出くわしたのでそんな会話を交わしたのだった。

私にとって三人共仲が良い友達なので正直一人を選べと言われたら難しいのだけど、
生まれつきエナの魅力を持っているヴェルヌ君は、何か不思議な魅力のオーラが出ているような気がして、
私は卵集めの任務もあったし、あまり考えずにヴェルヌ君に投票したのだった。
そして見事エナの子にはヴェルヌ君が選ばれた。

帰りがけにヴェルヌ君とレイオン君に彼女いるの?と聞いてみたら、二人とも相変わらずいないみたい。
ユナンも昨日まで「いい人いたら紹介して・・・」と言っていたのでそう答えるだろうと思っていたら、
返ってきたのは予想を反した答えだった。


「教えてあげない」


「え?」


私は聞き返したが、それには答えずにユナンは駆けていってしまった。

それから数日。
今までは結婚していることを知りながら、毎晩のように家まで訪ねてきてデートに行こう!と誘いに来ていたのだが、
あの日からぱったりと来なくなってしまった。
ヴェルヌ君とレイオン君は相変わらず誘いに来るけど・・・。
ユナンの事がどうしても気になってしまう。

「やっぱり彼女ができたのかしら」

それしか考えられない。
というか、状況からしてそれしかないだろう。
簡単な事だ。

だけど、どうして私はなんだか気持ちが晴れないのかしら・・・。

ずっと考えていたが、頭がこんがらがってよくわからなくなったので、とにかく本人に会って聞いてみようと思い、
彼の仕事場まで行って呼び止めた。

「・・・どうしたの? こんなとこに来るなんて珍しいじゃん」

「だって、ユナンの様子が変だったから・・・」

「そんなことないよ」

「そうかな・・・。じゃあ何? 『教えてあげない』って・・・。気になっちゃうわよ!」

「・・・・・」

何故か沈黙が流れる。
明らかにいつもと違うよねぇ。

「いいよ、じゃあ・・・少し時間を頂戴」

そう言われて、私達はタラの港へ向かった。
陽はもう沈み始め、空を赤く照らしている。


「ゴメン・・・あたし、なんかしたかな」

もしかして知らないで傷つける言葉を言っちゃったのかもしれないと思い、謝った。
するとユナンは驚いたような顔をした。

「ううん、違うんだ! 俺の勝手な我侭なんだ。ビーチェに俺を選んで欲しいなんて・・・」

「あっ・・・ゴメン・・・あたしヴェルヌ君に投票しちゃったね。
でも、三人とも選べないくらい素敵なのよ!」

「だからいいんだって。俺の我侭なんだって。
俺の方こそ、ジェラシーでビーチェに八つ当たりなんかしちゃってごめん!」

ユナンは一生懸命、目を固くつぶって謝った。

「いいのよ。謝らないで、ね?」

私はそんなユナンが愛しくなって彼が落ち着けるように頭を撫でた。
ユナンは俯いたまま顔を上げない。
肩が微かに震えている。

「格好悪いなぁ〜・・・俺・・・」


俯いたまま、彼は微笑交じりに言った。

「どうしてこう、好きな人の前で格好良く出来ないんだろう」

はたと手が止まる。

「あ〜、ビーチェ、何も言わないで!」

ああ〜くそ! もっと早くビーチェに出会ってればよかった!
初めて会った時から、もう結婚してるなんて、酷いよなぁ〜!

ぽつり、ぽつり、と彼の口から言葉が出てくる。
しかし私が何か反応しようとすると彼は制止してきた。

だけど制止しなくても、私はどうしていいのかわからなかった。
嫌ではなかった。
それよりも、愛しさがどんどん込み上げてくるのだ。
そして切なかった。
胸がきりきり痛んだ。


「せめて、手を・・・
手だけでいいからさ、握ってもいいかなぁ・・・」


私は手を出して彼の手を握った。
ユナンは精一杯それを握り返してきた。
最後の。
最後まで名残惜しむように。
きつく、きつく握り締める。
そして何十分も経っていった。



きっとこれが最後だろう。
これからは、ただの友達でいるだろう。
お互い、違う人を愛しながら生きていくのだろう。

だけどこの世界は続いている。
同じ時代に生きられた。
それだけでも、すごい奇跡なのかもしれない。




そのとき同時に、そう二人は思っていたのだった。












ドリバと結婚後のビーチェと、移住してきたユナン君の話です。
この時のビーチェにはもうブルーという一人息子が生まれています。
ユナン君はレイオン君ヴェルヌ君共々ClaireImageryの可南さんのキャラなんですが、
ビーチェと相性がいいのか、ずっとお互いに友人欄に入ってて何かと仲が良かったんですよ。
いつも既婚のビーチェをデートに誘いに来てくれてたんですが
ある日エナの子コンテストの後実際「教えてあげない」と言われて、
その時からぱったり誘いに来なくなりました。
それで「ああユナン君何か想いに決着をつけたのかな;」と思ってこんな話が浮かんだのでした。
正直不倫スレスレみたいな話なんですけどね(汗)

ユナン君は他の女の子と結婚したものの、ビーチェとはその後もずっと友人でした。
ビーチェにとって数少ない気を許せる友達、ですね。





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