刻印






「よく来たねゴン◆」

ゴンが扉をノックすると、バスローブ姿のヒソカが中から出てきて部屋へ迎え入れてくれた。
二人は何度目かの逢瀬で手馴れた様子だ。

「ヒソカ…腕怪我したって聞いたけど…」

「ああ◆ 大丈夫、ホラ何ともないよ◆」

ヒソカはひらりと両腕を動かして見せた。
ゴンは頭にクエスチョンマークを浮かべ不思議そうに首を傾げる。

「それよりさ…ゴン…◆」

「んっ…」

ヒソカがくいとゴンの顎を持ち上げ幼い唇に口付ける。
口付けは次第に深くなっていき、ゴンの思考を蕩けさせた。

「はぁ…」

「…ベッドに行こう◆」

小さく頷いたゴンをヒソカは軽々と抱き上げた。
奥の寝室へと向かい、ゴンをそっとベッドに降ろす。
キス一つで簡単に熱くなってしまった少年に笑みを浮かべながら、ヒソカは再び深く口付けた。
口付けながらゴンの服を器用に脱がせ、手の平で肌をなぞる。
そのくすぐったさにゴンは度々びくんと反応した。

小さな身体を胸の中に包み込むと、小動物のそれのような早い鼓動が肌を通して伝わってくる。
汗でしっとりと湿り気を帯びた胸が息をする度に大きく上下する。
その愛しい肌をもっと感じたくて、ヒソカは一度ベッドを下りて着ていたバスローブを傍の椅子に掛けた。
その様子を見つめていたゴンは、ヒソカの背中に蜘蛛のマークがあるのに気付き身体を起こす。

「ソレって…」

「ん?」

「蜘蛛のマーク」

「ああ…◆ (…また取るの忘れてた◆)
洒落てるだろ?」

「俺…聞いたことあるよ。それって幻影旅団っていう集団のマークなんでしょ。…ヒソカはその仲間だったの?」

「知ってたんだ◆そうだよ、僕は旅団のメンバーさ」

「極悪非道の殺人集団…」

「そうさ、別に僕がその仲間でもおかしくは無いだろ?」

「うん」

ゴンはヒソカから視線を逸らして俯いている。

「…僕が怖いのかい?」

そう問われてゴンは首を横に振った。

「違うんだ。怖いとかそういうんじゃなくて…ただ、クラピカに…後ろめたい気がして」

ふうん、とヒソカは表情を変えずに言った。

「ゴンが僕に会いたくないのなら、別に僕は無理に会おうとはしない。君の好きなようにしなよ」

「…! 会いたくないなんて俺言ってないよ!」

ゴンはヒソカの突き放した物言いに思わず叫んだ。
その必死な様子にヒソカは口元を上げる。

ゴンは僕の手の中に堕ちた。
もう君は僕無しじゃいられない。
君の行動も命の灯も僕が全て握っているんだ。

ヒソカは再びゴンに触れ、深い口付けと共に少年は快感の波間に飲み込まれていった――。







End.