くじら島の朝







「キルア〜?いい加減に起きないとミトさんに朝ご飯片付けられちゃうよ??」


朝は苦手だ。
それなのに俺と違ってゴンの朝は早い。
野生動物と同じように朝日と共に目覚めるんだろうか。

ゴンの故郷のくじら島にゴンと一緒についてきたのだが、ゴンの家も朝が早いんだ。
俺の家では仕事柄夜外出してることが多かったし、それに人がいつ起きようが文句は言われなかったから、俺はこの人達の生活リズムについていけない・・・。

「ほらキルア、そろそろミトさんがキレ始めるよ・・・。オレ怒られちゃうよ〜;」

「ん〜・・・もうちょっと・・・」

「駄目だよキルア〜;」

「ゴン・・・こっち来て」

俺はうっとりと目を閉じたまま俺を揺さぶるゴンを引き寄せる。
ゴンは多分困った顔をしているが、しぶしぶといった感じでそれに従った。
そんな愛しい君に口付ける。

「ん・・・」

そっと唇を触れ合わせたら、今度はその柔らかな唇を舐め、今度は舌を忍ばせて口内を味わう。
ゴンの舌は戸惑ってたどたどしい動きで奥へと逃げるが、俺はそれを強く吸って絡め取った。
こうしてやるともうゴンは逃げない。
ゴンの方からも相変わらずのたどたどしい動きで俺に返してくれた。

甘いキスに浸っていると、ゴンが急に腕をつっぱって俺を引き剥がした。
せっかくいいとこなのになんだよ?と思って俺は不機嫌っぽく目を開けてゴンを見る。

「もーいいでしょ、起きてよキルア・・・;」

「しょうがねーなー・・・。起きてやるか」

やっと起きてくれたよというゴンの独り言に俺は聞こえないふりをした。
んーーと大きく伸びをして、深呼吸する。

「おお、くじら島の爽やかな朝の空気だ」

「・・・もうお昼前だけどね」

ふわ〜ぁ。聞こえない聞こえない。


「さて、ミトさんの美味しい朝メシでも食べに行くか」

「まったく、キルアってば調子良いんだから〜;」


穏やかで、暖かで、優しくて、
心地よいくじら島の一日が始まる。

こんな日々がいつまでも続けばいいな。

―――でも、まだ暫くは、
この優しくて気持ち良い日々を過ごせそうだ。






End.