距離







ヒソカはすごい。

多分、ヒソカは俺に会いたい時は必ず会いに来れるんだろう。

「奇術師に不可能は無いの★」

こう言ってヒソカは何だってやってしまう。
本当は陰では物凄い努力をしているのかもしれない。

だけど俺は・・・
彼に会いたくても、どうしたらいいのか分からない。
いつも突然現れては、突然消えてしまう。
一度消えてしまうともう全く手掛かりさえ掴めないんだ。

だから・・・
無駄だと分かっていても、待ち合わせしたこの公園の噴水で、彼をあの時のように待ってみる。

灰色のどんよりとした空の下で、何時間も・・・。
公道を通る人々が急ぎ足で過ぎていく。
不意にぽつ、と雨粒が腕に当たった。

「雨だ・・・」

俺も、泣きそうになった。

ヒソカは俺の事を恋人だと言ってくれたし、一番近い存在だと思っていたのに、何て遠いんだろう。
今まで気付かなかったけれど。
それだけ彼を好きになってしまったんだろう。

ヒソカに、会いたいな・・・。

心の中で呟いた言葉は、雨に打たれて消えた。

それでも。
もうちょっと待ってみたいと思うんだ。







End.