黄金




鬱蒼とした茂みを掻き分け掻き分け、何の舗装もされていない山の急斜面を登っていく。

夕方と呼ぶにはまだ早い時間に、黒髪の少年は一人、森を駆けていた。
心なしか焦りで息を弾ませている。

暫く登ると、目の前が開けた高い丘に着いた。
足元は崩れて崖になっていて、そこからは闘技場と街が一纏まりに見渡せた。
ここからだと少し小さく見える天空闘技場の後ろで、太陽が少しずつ落ちようとしていた。

「よかった、間に合った」

師匠に戦いを禁じられ時間を持て余していた彼は、山歩きでこの丘を発見し、いつしかこの丘に来て夕焼けを見るのが日課になっていた。

少年は静かに太陽を見つめた。

少しずつ、少しずつ、暗くなっていく。

カサッ・・・

葉が踏まれる音に、ゴンは驚いて振り向いた。

「や◆」

「ヒソカ・・・!どうしてここに・・・?」

「君がいつも何処に出掛けているのか・・・気になってね。
そしたら何の事は無い・・・景色を見に来てただけか◆」

「そうだよ。ほらヒソカ、日が沈んできた・・・」

少年が警戒心もなくそっちを見るので、興をそがれたヒソカは少年の見る景色の方に目を移した。
太陽が世界を巻き込んで全てを赤と金に染める。
塔や町並みが影となって、黄金色の太陽にその身を潜める。

確かに美しい・・・。
ヒソカはそう思った。
長い事景色に見惚れる事なんて無かった気がする。



ゴンはふと隣りに立つヒソカを盗み見た。
夕焼けを見つめる彼の瞳。
そこには、太陽と同じ黄金が映し出されていた。







End.