破壊衝動



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ヒソカは高く積み上げられて育った才能に溢れる人間を壊す事に酷く快感を感じている。
しかしなかなか叶えられないその欲望はしばしば欲求不満となってヒソカを襲う。

長く見守るうちにいつしか愛情を持ってしまったゴンに同時に抱く破壊衝動…
ヒソカはその二つの感情の間で揺れる。

こんなイメージで進めて行きましょう。
ヒソカ視点の話になるかな?

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壊したい
壊したい
壊したい…。

無垢なものを。
壊したらもったいないものを。
才能に満ち溢れたキミを。

耐えられないよ。

体の内から沸き上がってくるこの衝動は何だ?

僕はどうやってコレを耐えればいい?

教えてくれ。
僕はいつ君を壊せるんだい…――?




目的地が一緒なのは偶然だった。ヒソカは除念師を、ゴンは父親を求めてそれぞれG・Iに入った。


直接会ったのは何ヶ月ぶりだろう。いい師に巡り合えたことで、これまでとは比べ物にならない程成長した彼の姿。レイザーとの一戦で押さえ込んだ熱が、いまだ体の奥で燻っている。
旅団の三人と別れた後、見かけた人間は片っ端から切り刻んでいったが、フラストレーションは溜まる一方だ。暗闇の中、ヒソカの体を禍々しいオーラが覆う。その殺気に敏感に反応した周りの生物が全て、森から姿を消した。


抑えなきゃ・・・あの子はまだまだ、成長する。
ああ・・・でも少しだけなら・・・・
味見をするだけ、ほんの少し・・・・



「ブック!」

さきほど殺した相手から使えそうなカードは奪っておいた。雑魚ばかりだったせいか、たいしたカードは持っていなかったが、今は”交信”さえあればいい。

「”交信(コンタクト)”使用(オン)!ゴン!」

用があるのはゴン一人。キルアとビスケに怪しまれず、二人きりになれるだろうか。
ヒソカは森が少し開けた場所まで歩くと、木を背にして地面に座った。


『・・・・・誰?』

警戒した声。

「僕だよ◆」

『ヒソカ?どうしたの?』

「今、一人かい?」

『ううん』

「話があるんだ。キミ一人だけに・・・◆」

『んーちょっと待ってて』

バインダー越しに、話し合う声が聞こえてくる。あの二人が簡単にゴンをはなすとは思えない。断られるならそれでもいい。また、我慢を続けるだけだ。
しかし、答えはあっさりしたものだった。

『わかった。あんまり時間はないんだけど』

今ゴンに危害を加えるはずがないとキルアが助言したのだろう。もしかしたら、不自然なヤツの動向を探ってこい、などと言われているかもしれない。

「いいよ◆それじゃ待ってるから」

『あ!どの辺りにいるの?今はできるだけ呪文カード使いたくないんだ。走って行けるかな』

「僕のをあげる。”磁力”が二枚あるよ」

『ほんとに?じゃあすぐ行くね!』

少し嬉しそうにゴンが言って、交信が途切れる。ヒソカは包帯を巻いた手でトランプを取り出し、折れた指で器用に遊ばせながらゴンを待った。



「よくきたね、ゴン」

砂埃を舞い上げながらゴンが現れた。“磁力”で飛んできたのだろう、片手には本を持っている。

「ヒソカ・・・」

ゴンは本を消すと、あきらかに様子のおかしいヒソカを見て、一言呟いたきり立ち竦んだ。そのままの距離を保ち、近づこうとしない。

「どうしたんだい、おいでよ」

いきなり飛び掛ったりしないから・・・。ヒソカは座ったままゴンを見上げ、何もしないとアピールするように両手を広げて見せた。
そんな些細な動きにさえゴンは驚いて肩を揺らし、ジリ、と足を後退させた。

「話って、何」

「ああ、あれはウソ◆」

「どういうこと?なんで嘘なんか・・・」

額に汗を浮かべ、強張ったゴンの顔。たまらない。ヒソカは目を細め、ゆっくりと立ち上がりながら言った。

「キミに、会いたくてね・・・◆」

ヒソカが一歩踏み出すと、同じだけゴンも後ろに下がった。
ゴンはヒソカの一挙手一投足に神経を集中させ、ともすると震えだしそうな足を踏みしめた。しかし黒い双眸だけは屈することなく強い光を放っている。

ヒソカをどうしようもなく煽る眼。・・・箍が外れてしまう。

「昼間も一緒だったでしょ・・?」

「でも、二人きりじゃなかった◆」

この距離ならゴンが呪文カードを唱える前に口を塞ぐことができる。もちろん走って逃げるなど不可能だ。ゴンもそれが分かっていて、迂闊に動けないのだろう。
可哀想に。今すぐこの場から離れたいと顔に書いてある。ヒソカは一歩、二歩と足を進めた。

「今日は本当に時間がないんだ・・・」

「まだ来たばかりじゃないか」

慌ててはいけない。時間を掛けて、ゆっくりと獲物を追い込んでいく。

「・・・用がないなら帰らないと」

「つれないこと言うなよ◆」

ゴンの後ろには、樹齢百年以上はありそうな大木がある。ゴンはその木に向かって後退していった。


「ヒソカ、今日は変だよ・・・」

「そうかい?」

「・・・っ」

ゴンが鋭く息を吸い込んだ。抑えきれない恐怖から呼吸が速い。とうとう背中が木にぶつかったのだ。追い詰められたゴンは、反射的に横に逃げようと地面を蹴った。

「逃がさないよ」

ダンッッ。ゴンの背後の木にヒソカが両手をついて、小さな体を腕の中に囲った。
ちょっとやそっとではびくともしない大木が、強い衝撃でミシミシと嫌な音を立て、葉を舞い散らせた。

中身は成長したといっても背はそう伸びていないらしい。ずいぶん低い位置に頭がある。ヒソカは腰を深く折って耳に唇を寄せた。

「さあ、どうする?ゴン・・・」




つづく

参加者/花峰ショウ/mimi様/