喪失
「なぁゴン」
「ん?どうしたのキルア?」
「こんなところに痣なんてあったっけ?」
「えっ?」
胸と脇の間の、ちょうどタンクトップからはみ出ている部分を指差して俺が指摘すると、ゴンはその痣に初めて気付いたように、ばっと手でそれを隠した。
顔が赤くなってる。
「何の痣?」
「し、知らない…!」
「嘘つけ、それは明らかに知ってるそぶりじゃねーか」
「知らないってばっ」
ますます赤くなるゴンを訝しく思いながらも、何も知らない俺はからかうようにちょっかいを出す。
そして、漸く俺はその痣が何なのかということに思い当たったんだ。
子供な自分が憎い。
目の前の親友は、俺よりも本当はずっと大人だった。
ヒソカが、つけた痕だ…。
つい想像して、自分の方が赤くなりそうになるのを必死で堪えた。
テレビの中だけでしか知らない世界に、恥ずかしさと共にショックを受けながら。
同時に何とも言えないような喪失感を覚えた。
自分の知らないところで、この大事な彼が、誰かの手で抱かれてるなんて。
とても、許せなかった。
ゴンは俺だけのものだ…。
恥ずかしがるゴンを無理矢理に引き寄せて、その痕に口付けた。
強く吸ったら…この身体に回った毒も吸い取ってしまえるだろうか。
「キル、ア…??」
ゴンが俺の行動に若干パニックになって俺を見つめる。
「いいじゃん、これぐらいさ」
俺はニヤついた顔を見せながらも、心の中のどうしようもない虚しさを、どうしたらいいのか考えあぐねていた。
End.